〜随想・心の恩師〜 内山光之先生

 

その先生は私が小学校三年に進級した新学期
大学を卒業したばかりの新卒教諭として私たちの前に現れた。

見るからにハツラツとしてスポーツマンといった感じのその人は、
精悍な体に太いのどぼとけが印象的で、すぐにキリンのあだ名が
だれからともなく付けられた。

当時の学校としてはかなり型破りなタイプの先生で

「また教頭に叱られちまったよ~。」

と頭を掻き掻き生徒の前で片目をつぶって見せるひとだった。

給料が安いと言っては給食の残りのコッペパンをカバンに詰めて持ち帰り
それが原因でかある日腹痛をおこして学校を休んだ。
その日教頭が教室にやって来て、

「内山先生が給食のパンを持ち帰っているというのは本当か?」

と、 にがりきった顔で私たちに尋ねたものだ。

また土曜日の放課後にはクラスの生徒を屋上に連れ出して
安月給で買った菓子パンと牛乳をご馳走してくれたりした。
普通では考えられないことだし、子どもたちにはスリルさえ感じる出来事だったが、
眼下を帰宅していく他クラスの生徒を眺めながらほおばったジャムパンのうまかったことと
その時感じた優越感は今でも鮮明に覚えている。

案の定、月曜日には例のごとく「また教頭に・・・・・・」の
セリフを聞くことになったわけだが。

とにかくクラスのみんなが内山先生を慕っていたし
正義感の強い級友は
「先生は悪くない!」
と教頭に食ってかかったりしていた。

特にそれまで気弱でいじめられっ子だった私に

「おい、進治の家はスイカを作ってるんだろ!採れたら先生にもくれよ!」

などと声をかけてくださり、髪の毛がクシャグシャになるほど頭をなでてくれた。


お陰で学校に行くのが楽しくなった私は先生に認められたい一心で
授業中にも手を挙げて発言するようになった。
それまでなら考えられない変化を遂げたのである。

 


先生はいつもレモンの香りがしていた・・・

 


休み時間にはみんなでじゃれあいながら先生にしがみつき
その匂いをかぐのが好きだった。

 

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